『新装版 役人道入門ー組織人のためのメソッドー』
今回は元大蔵官僚であり、現在は西日本シティ銀行の頭取を務める久保田勇夫の『役人道入門』の要約・感想である。
さて、本書は、財務官僚として働いてきた著者が、自身の経験を交えつつ、公務員(著者が念頭に置いているのは主に「国家公務員」と思われる)としてどのように日々の仕事をこなしていくべきか説いたものである。
章立てを見ても、文章、交渉、組織、人事といった章のほか、彼らの生活からどうしても切り離せない、過酷な激務と向き合う方法を説いた健康編という、官僚として人生を送ってきた著者ならではの視点が盛り込まれている。
しかし、その内容は必ずしも官僚の世界だけで通じるといったものではなく、総合職と呼ばれる職種につく人を始め、様々な人にとって参考になる部分がある。
例えば、文書を書く際には、誰が読むのか、その文書は何に使われるのか(内部の検討なのか、それとも外部に出す文書なのか等)といった、その時の状況を把握した上で、それに応じた文書を書く必要があると著者は述べているが、これは一般企業においても同じことが言えるだろう。内部の会議(打ち合わせ)用なのか、それとも外部の人間を含む会議用なのかなど、状況によって求められる情報の確度も変わってこよう。
他にも、
・交渉の際には、まずは相手の話を反論せずに一旦は聞き、相手を知り、次に、納得できない部分については質問を試み、第3に相手の立場に立ってものを見てみる。また、このようなステップを通じて、先方の主張の背景、プライオリティ、先方の中での決定権者を探る
→攻め方を柔軟に変え、有利に交渉することができるように。
・上司は部下が考えている以上に、部下のモチベーション等を考え、本音を言わない。
・2種類の異なる仕事を抱えておくと、片方がうまくいかないときに、気分転換も兼ねてもう片方の仕事に取り組むことができる。
↑これは勉強に通じるものもあるだろう。
・リーダーの資質の1つは、緊急な事態に直面してただちにこれを適切に判断し、かつ、具体的行動を即座に実行させる能力。
・心身ともに健康を守るため、朝昼晩の食事を欠かさないこと、適度な運動を心がけること、そしてリラックスできる機会(同期の集まりや何かしらの共通点を持つものの集まりなど)を積極的に見つけること。
といった、社会人にとして心に留めておくべきことが多く記されている。
最後に1つ付言するとすれば、本書はあくまでも官僚としての著者の経験に基づく場面が多いため、官僚の生活に興味がない、または共感できない者にとってはあまり面白くないものであろう。無論、タイトルからして役人のための本という面は明らかであるが、位置付けとしては、自己啓発色の混じった読み物というべきであろうか。
良くも悪くも、実体験の部分が多いため、読みやすい本ではあったが、内容的にそこまで固いというものでもなかったというのが、全体的な感想である。
政治家とリーダーシップ
今回は、政治家に必要なものとリーダーシップのあり方について著述された、山内(2007)『政治家とリーダーシップーポピュリズムをこえて』の内容をまとめておく。
全体の流れとしては、まず著者自身の考える政治家のあり方、求められる資質などを述べた後に、それが日本の教育システムのもとでは、もはや獲得するのが難しくなっていることを指摘する。その後、混迷している中東情勢に目を向け、中東和平のために中東の指導者にも同様の能力が求められていることを確認した後、再度日本の政治家が果たすべき役割を述べ、筆を置いている。
以下、本書のポイントを、備忘録的に書き残しておく。
・政治エリートとは、大局観と総合力に培われ、健全な愛国心と国民への忠誠心をもつ人々
・大局観と総合力は教養とそれに基づく判断力によってもたらされる(45ページ)
・政治家にとって、教養とは知識量の絶対的な多さではなく、ある物事を決定したり、判断を下すときに、自分なりの揺るぎない根拠を自他共に持てるか否かという点にかかわるもの。→ある分野に偏っていないバランスのとれた知と教養が必要
・日本と日本人に関わる歴史軸と空間軸をしっかりもつことが必要
・指導者(特に外交に携わるもの)は、何を言うべきかをよく検討していないうちは、喋りたくてもその誘惑に勝てる自制心をもたなくてはならない。
・中東和平には、当事者双方が妥協という前向きで良い方向への「変節」が必要→このような変節をする決断と勇気は、一時的に汚名を被ることがあろうと、歴史において必ず蘇る日がくる
『立憲的改憲ー憲法をリベラルに考える7つの対論』
本書は、山尾志桜里氏(刊行当時立憲民主党、現在国民民主党所属)が安倍政権による改憲に対する対案を提起するにあたって、7人の論客と対談したものである。
山尾は自身の改憲案(氏は自身の改憲を「立憲的」改憲と称している)の一部として以下の2つを提起している。
①自衛権の行使を個別的自衛権に限定するという明文規定を設ける。
②権力の暴走に歯止めをかけるために憲法裁判所を創設する。
どちらも、それまで積み上げてきた憲法解釈を容易く変更する安倍政権を念頭に置いたものである。本書では、この2つの提案を軸に、憲法学者や、政治思想、外交の専門家たちとの対談が行われた。
私は統治機構の改憲論(特に選挙制度や議会制)に興味があるため、本書の内容は正直なところ期待外れではあった。
しかし、その中でも覚えておきたい論点、思考法があったため、ここに書き残しておく。
まず、1点目は、第2章の井上武史との対談において、井上が持ち出した考え方である。井上は、フランスにおける憲法改正のロジックを紹介し、憲法改正とは本来、目指すべき国家像、理想像のようなものがあり、それを解決する手段として、憲法改正を提起すべきであると述べる。
本書でも、山尾、井上の両者が指摘しているが、自民党の改憲案の4項目(教育無償、合区解消、緊急事態条項、自衛隊明記)には、そのような理念がない。私としては、参議院は地方代表の府にすべきだと考えているため、そこから合区解消という考えに至っているが、改憲案は政局的な問題から合区解消を提案しているにすぎない。
本気で改憲をしたいのであれば、理念を示す必要がある。
次に、もう1つの論点は、第6章において、駒村圭吾から提起されたものである。すなわち、法と政治はある程度の距離を保つべきである、と駒村は主張するのである。
これは、憲法解釈に国民が関わる機会が少ないこと(=専門家だけにより解釈が行われていること)が、国民が憲法から遠ざかっている原因なのではないか、という山尾の問いに対し答えたものであるが、私もこのバランスの取り方は、国のあり方を考える上で、非常に適した考え方であると思っている。
そのため、別の文脈ではあるが、私は裁判員制度や、抽選制議会などの民主的基盤を強化しようとする各種の試みには慎重な立場である。
確かに、民意を取り入れることは重要な試みではあるが、専門家だからこそ担える職責というものがあると考えている。また、そのような中で取られてきた均衡もあるだろう。それを壊して、民意を取り入れることは、新たな問題を生じさせるのではないか。
さて、あまり関係のない私見が長くなったが、本書は憲法9条と憲法裁判所という2点を糧に、憲法改正について、7人の専門家から多大な情報を抽出している。また、ただ単に党のマニフェスト、という形でもなく、山尾の改憲案と自民党の改憲案について、専門的な立場から批判がなされている。
憲法改正に興味はあるけど、党派的な話はちょっとな…という方や、特に憲法9条を改正するならどういう選択肢があるのか知りたいという方にはおすすめできる内容である。
政治家の条件
いまだコロナ禍の真っ最中ですが、今回は書評、というか読書メモです。
タイトルにつられたものの、中身は発行時の時事的な出来事を批評するものがほとんどだったので、参考になりそうな部分だけ読み、簡単に残しておきたいと思います。
さて、今日読んだのは森嶋通夫(1991)『政治家の条件ーイギリス、EC、日本』です。
著者は本書で、ウェーバーの「信条倫理」と「責任倫理」を持ち出しつつ、政治家に必要な条件を論じています。すなわち、政治家には、自分が本心からやりたいと思っていること、それに対する熱情(信条)が必要な一方で、現実を冷静に見て、後から論理的に説明できること(責任を果たせること)の両者が必要であるとします。それに加えて、両者をバランスよく使い分けるバランス感覚(私はそれを強かさともいえるかなと思いました)が必要だとも述べています。
確かに、熱情だけが先走っても周りの支持は得られませんし、リアリスティックなだけでは、思い切ったことはできません。その点から、著者の言う通り、バランス感覚が必要なのでしょう。
また、もう一点気になったのが、日本の政治家に対し、知恵を身につけるという注文が入っている点です。著者が言うところによると、政治の世界には、信条が異なる人を相手にするわけなので、政治家に必要なのは、そのような人々を説得する力であり、説得するためには論理、知恵が必要というわけです。
ただ、この点については、論理に優れている石破さんの現在の立ち位置を考えると、それもまたバランスが必要なのかなというのが正直な感想です。
- 作者:森嶋 通夫
- 発売日: 1991/12/20
- メディア: 新書
6、7月の反省と今後の指針
久しぶりの更新となってしまいました…
というのも、6月から通常勤務が始まったうえに繁忙期と先輩職員の産休入りが重なり、体力・気力の限界で何もする気力がございませんでした。
社会人としての体力のなさを実感した日々でした。
ふ
一方で、世間はコロナとどう向き合っていくのか、その方向性を模索している段階です。
その動きを首都東京で迎えている身としては、雑感をまとめておくべきだと感じているところではありますので、項を改めて書き記しておきたいと思います。
さて、本題に入り、8、9月の勉強の方針を定めておきたいと思います。
資格
(1)税理士
税理士試験については、簿記論・財務諸表論の勉強を始めたいと思います。
一冊につき、半月ほどで終わる分量となっておりますが、仕事との兼ね合いでどうなることやら…
9月末までに簿財のテキストを2冊ずつ終わらせたいと思います。
↑これの2021年版が昨日出たので進めていきます。
(2)修士論文
修士論文については、時間的な面・経済的な面から少し難しいのかなと思い始めました。研究というものについての見通しが甘かったとしか言いようがありません。
現在のところの選択肢としては、もう一年休学を延期、もしくは退学のどちらかだと思います。正直税理士資格よりは優先度が低いため、こちらにウエイトを置くのは難しいのかなといった感じです。
政策研究
政策研究については、地方における農業振興に関して、農水省の白書及び果樹農業の振興を図るための基本方針から以下のようなことを考えました。
・日本農業の現状
高齢化の影響を受けた産業としての農業の縮小と日本全体の人口減に伴うマーケットの縮小から、海外マーケットを狙っているのが現状。しかし、そもそもそのような輸出の拡大という方針に耐えうる基盤がないため、伸びきれなかった。そのため、引き続き農業の大規模化を進め、意欲ある担い手による農業の発展を進めるとともに、最新技術を導入し、効率化を図るという方針。
・課題
①野菜にしても果物にしても、品数が足りず、思うような販売ができていないのが現状。原因としては気候の影響が大きな原因?どうにかして数を増やさないと輸出どころか国内でも不足するのでは?
②農業の大規模化は歓迎だが、その人はいつまで農業ができるのか。次の世代につながってくるのか。
③大規模化した農家と農協との関係はどのようなものになっていくのか。大規模農家に農協は必要なのか。
④大規模農家は地域コミュニティを担う存在になれるのか。いっそその地域の雇用をいくつかの農業法人が担っている的なコミュニティのあり方もあり?
教育については、教育の現状を把握するために以下の本を読むつもりではあるが、コロナ禍の前に出版された本であるため、状況は激変している。
出版された時期も考えると、教育格差という論点については以下の本が参考になるのではと考えています。
2020年5月の目標到達度と6月の目標
今回は5月の目標の確認と6月の目標設定を行います。
資格
税理士:簿財テキスト購読
→テキスト選定は完了したが、来年度受験用のテキストの発行が8月くらいのため、購入は延期
【6月目標】
①会計人コースを読み、学習計画を練る
②先行して勉強できる科目がないか検討し、あれば始める
修士論文:インタビュー内容をまとめる
→Rの勉強(週末に2時間ずつ)※
→農林統計など、使用できる指標の探索
→土日を利用して進める予定であったが、上記のことは何もできなかったので、生活リズムの改善と合わせて6月は積極的に取り組んでいきたい
一方で、概念的な整理は進んだため、国会図書館等の開場次第、さらに進めていきたい
政策研究
地方創生:農業の現状把握
→果物関連の本、園芸農業の歴史
→食糧・農業・農村白書(令和元年度版)購読
→5月中旬ごろに専門である果樹農業における政府の基本方針が発表され、その読み込みに時間を要したこともあり、白書を途中まで読む段階で終わってしまった
【6月目標】
①地方創生(農業振興)分野については、白書を最後まで通読する
②6月の分野として、教育の振興(教育格差)を選び、まずは以下の本を読み、現状の把握に努める
語学
単語1日1時間
→ほとんどできていないため、6月は就寝前のリスニングを徹底したい